中京の坂だより・5     

 八事(やごと)は名古屋市の南東部、昭和区・天白区・瑞穂区の3区が接する地域である。
 地下鉄鶴舞線と名城線(環状線)が交差している交通の要衝で、道路でも飯田街道、山手グリーンロードはじめ7つの道が集中している。
また、近くには名城大、中京大さらに南山大、名古屋大と大学や高校も多く、「文教地区」「若者の街」という呼び名が定着した新しさと古さが混じる発展途上の地域である。

やごとの「や」は岩を指し、「ごと」は古語の「こごし」、即ち岩の固まりがごつごつと重なっている意味で、凹凸の多い地である。町名でも八事本町、八事富士見(以上昭和区)、八事石坂、八事天道、八事山、天白町八事、元八事(以上天白区)と多くが「八事」を名乗っている。

この地域は江戸時代から景勝の地として知られ、大正時代にこの地まで市電が 開通してからは名古屋近郊の最大の行楽地であり、トヨタ自動車の創業者・豊田喜一郎も この地に別荘を構えていた。

人々を多く集めたのは真言宗・八事山興正寺の存在で、1686年に建立された。 尾張徳川家の祈願所とされ、高野山に模してつくられ尾張高野とも言われた。 現在も広大な境内を擁し、毎月5日、13日の縁日には多くの参詣者で賑わう。

一方、南側には家康との縁の深い天動山・高照寺がある。
私事になるが、小生はここで地下鉄を乗り継ぎ大学に通っているし、 食用品などを調達するジャスコも交差点角にある。

この八事は丘陵地にあるので当然坂道は多くあるが、 最近交差点に「八事八つの坂」の看板が建てられている事に気づいた。

地域振興会という商店街が、名前もつけて立てたようで、 区を越えて街おこしに坂道を利用しようといているようで、 名前の付け方は気にはなるが、気持を歓迎をしたい。
上述の7方面の道に加えて脇道にも名を付けて、八事の8に合わせたようである。

加えて各道路面に「坂標プレート」が複数埋めてあり、 相当力が込められている。各坂の紹介は次回にしたい。

(歩道にある「坂標プレート」)


 

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