「桜の坂」競艶



いよいよ東京もさくら色に染まるシーズンとなりました。
お花見スポットもたくさんありますが、いつもと違ったお花見に「桜の坂」はいかがでしょう?
今回は「桜の坂」をいくつかご紹介しましょう。  
 

  君よずっと幸せに 風にそっと歌うよ
    愛は今も愛のままで 揺れる木漏れ日 
     薫る桜坂 悲しみに似た薄紅色

  
福山雅冶さんの『桜坂』で一躍「坂」でのスターとなったのは 沼部の「桜坂」です。
 

東急多摩川線の小さな駅舎から降り立ってすぐの、普段は閑静な住宅街にある坂道です。
「桜坂」がヒットしてからお花見どきには、多くの人が訪れる場所となりました。
街道を跨ぐ赤い橋の上では 桜の花が手の届きそうな所まで枝が伸びて、桜並木を眼下に眺めることもできるのです。
旧中原街道はカップルの車の渋滞がず〜と続きます。

ちょっとそこまでは遠い・・・という方にはこちらを。
都心の赤坂アークヒルズの縁を沿って上る「桜坂」です。こちらは大人のムードを楽しめるスポットでしょう。
サントリーホールでのコンサートの余韻にひたりながら、ライトアップされた桜の下を歩く・・・なんと羨ましいこと!
お洒落なカフェもレストランも近くにスタンバイしていますしね。
 

「桜坂」


ひらがなの「さくら坂」は3ヶ所あるのですが、みな最近生まれたばかりの「さくら坂」です。
そのうちのひとつはおそらくお出かけスポットとしては一番メジャーな場所になるでしょう。
六本木ヒルズの「けやき坂」と並ぶ「さくら坂」がそうです。
オープンが2003年ですからそろそろ4歳になります。
まだお花見スポットとして、デビューするには若すぎますね。
一丁前に枝葉を伸ばすまで見守っていきたいと思っています。

「さくら坂」


その他高輪プリンスのさくらタワーエントランスへの坂にも「さくら坂」と表記されている道がありますが、ここはプライベート敷地ですので、フリーでの立ち入りは遠慮しましょう。2005年荒川土手の再開発地敷地内にも「さくら坂」と名付けられた通りができましたが、この名を冠するにはまだまだ赤ちゃんで、地元の方にもまだ知られていないようでした。   
こんなふうにスロープで桜の木が植えられたから「さくら坂」なんて、どんどん増えそうな気がしますが、ちょっと個性に欠けますね。
そんななかで、とても素敵な名前を持つ桜の坂があるのです。

「花影坂」 


この坂道は玉川学園にあるのですが、住民の方たちのアンケートによって名付けられたということです。
大きく枝を広げる桜は、古くからこの道にあって、ここを通る人を優しく見守っているようです。
時を重ねて懐かしさを漂わせる空間になっていて、名付けた方々の想いが伝わってきます。素敵な土地の財産ですね。
(小田急小田原線・玉川学園前)


さて、桜の名は持ちませんが、桜に彩られる坂道も東京には多いのです。

「播磨坂」


今や都内でも屈指のお花見スポットとなりました。
道幅は広く、中央分離帯に桜並木が続いて、ここで座って宴ができるのです。
戦後できた道(環状3号線)なので、「播磨坂」の名前は江戸時代からこの道があったと誤解されるので 「いかん!」と、坂の研究者である重鎮は、この坂の話となるとご機嫌を悪くして「さくらの坂」と敢えて言っていました。
ま〜、そう固いことは言わずとも「播磨坂は桜の坂」と定着してきたようです。
(丸の内線・茗荷谷駅)

電車ファンには「電車と桜」がセットで眺められる坂があります。

「飛鳥坂」


ゆったりとした坂を車輪を軋ませてカーブを描いて行く電車は桜を背景に誇らしげに見えます。
(JR王子駅、都電荒川線・飛鳥山駅)


最後にもうひとつ。
「禿坂」です。
どう読むかおわかりですか?
変換でこの字は素直に出てこないのでちょっとゴメンナサイ、「ハゲ」と打ちますが「かむろ坂」です。
どうしてそんな名前なの?とお思いでしょうが、 「禿」とは河童を指します。
即ち、おかっぱ頭の髪型のことを言っているのでしょう。
坂の標識によると「延宝七年白井権八が品川で処刑され、そのあとを慕って遊女小紫が自害した時、その待女(かむろ)もあとを追って、桐ヶ谷の二ツ池に身をなげたという。
その後この一帯の丘陵をかむろ山、これに通じるこの坂を禿坂と今によび伝えている」とあります。
今ではそのような悲話も想わせない華やかなさくら並木の坂となって眼を楽しませてくれます。
(東急目黒線 不動前駅)


忙しくて、お花見に行きそびれたという方に未だ間に合いますよ!と、こちらを。
ソメイヨシノばかりが桜ではありません。
10日ばかり後になってからでしょうか、八重桜の並木が迎えてくれる道があります。
坂ではありませんが「清水谷」と呼ばれ清水坂に通じています。
弁慶橋からニューオータニ前の通りには東京には珍しい八重桜の並木が続いていて、華やかでお洒落な空間が広がっています。
あまり混むと嫌なので本当はナイショにしておきたいスポットなのですが・・・
(赤坂見附、永田町駅)
  


皆さん、普段はお馴染みの無い場所かもしれませんが、桜が出迎えてくれますよ。
これらの「桜舞う坂道」をあなたのお花見処に加えてくださいね。


2007年3月28日 (盃のり子)


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